コミュニティーインフォ
1989年渡米。NYU英語コース、パーソンズスクールオブデザインを経て、現在はフリーランスのグラフィックデザイナーとして活動中。2002年9月に初の著書となる『笑うニューヨークDELUXE』を講談社文庫より出版。今年5月には第二弾となる『笑うニューヨークDYNAMITES』を上梓し、出版記念サイン会を日本にて行った。 現在、愛犬のシベリアンハスキーの「チョビ」(コミック『動物のお医者さん』好きか?)と二人暮らし。何でも「チョビ」のほうが男の子にモテモテなのが口惜しいとのこと。
<vol.20> 『 ブラインド・デート2 』

もうホントこう言っちゃ悪いんですが、思いっきり渋々バーカウンターに座りまし
た。レンジャースの赤いジャンパーを、バースツールにかけたおっさんと並んで。そ
もそも何を弁護する弁護士なのか知らないし、すでにこの時点で知りたいとも思って
いなかったリンコだが(ヒドい)、話題がなさすぎて仕方なく「何の弁護士さんなん
ですか?」と訊いてみた。で、レンジャースのジャンパーは着ているけれど、とって
も真面目でいい人(だと思う)のボブさんが熱心に説明してくれたんだけど、そもそ
も興味のない分野の話なうえに、訊きたいと思って訊いたわけでもない話なので(ホ
ントにヒドい)、右から左に抜けてしまった。だから、今だにボブさんが何の弁護士
さんなのか不明なままである。リンコの頭の中では、弁護士というと、ビシーっと渋
いスーツを着こなし、ダークヘアーで(何故か)、アタッシュケースを持っていて、
革靴をはいていてカツカツカツっと歩いて(?)、前髪なんかはさらさらで、見るか
らに切れ者フウの風貌であるハズなのだ。俳優で言うと、アンディ・ガルシアとかリ
チャード・ギアとかアル・パチーノとか(そんなもんそこら中にいるわけないか)。
水色の縞模様(ストライプではなく縞模様)のワイシャツの上ボタンを開けたままで、
グレーのスラックスに金色のバックルつき黒ベルトをしめた、お洒落なバーカウンター
でビールを飲むおっさんではイカンのだ。
 しかも致命的に共通の話題がない。いきなり政治の話や経済の話をしはじめたボブ
さん。元々聞く気がない上に、興味も知識もない話題をふられ、適当に聞き流しなが
ら「へえへえ」と不真面目な態度で頷いていたら、途中で「キミはこれについてどう
思うか?」と意見を訊かれた。当然、あうあうあう、となって全く返事ができなかっ
た。
 こんな風に最初から最後まで、全く話がかみ合わないまま、ブラインド・デートは
終わり。ボブおじさんは、自分の名刺を渡しながら「何かあったらいつでも電話して
きなさい」と言ってくれたが、リンコの電話番号は訊かなかった。政治の話も経済の
話も、ロクに返事ができなかったせいで、きっとバカと思われたに違いない。まあい
いや別に(ヒドい)。新聞を小脇にかかえ、赤いレンジャースジャンパーをきたボブ
おじさんは、その異様に長身の背中を丸めて寒空の下帰っていった。
 ああ。今日は大失敗だった。冬空を見上げながら天に誓う。次こそは!
〈まだやるのか!? 懲りないという次元を超えている女・リンコ。次の相手はまた
弁護士! どんな人なんだろう、待て、次号!〉


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