お洒落焼き肉レストラン『ウーレイオク』。昔昔、まだ私がいたいけな少女だったころ(いつの話じゃ)、この焼き肉レストランはたしかミッドタウンにあったはず。火事で消失した(んだったと思う)後、いつの間にかこんなお洒落になってソーホーに出現していたなんて全然知らなかった。そもそも日本人に人気のあったこのレストランは、その漢字名から(又来屋)日本人の間では『またこいや』と呼ばれていたのだ。そんなちょっとマヌケ気味な焼き肉レストランだったのに、今やソーホー。そしてそんなニュー『またこいや』に、十ウン年ぶりだというのにこんな男 G と来ている私って一体。
「うわー。ウーレイオク。懐かしい……」
思わず店名を見上げながらつぶやく私。
フフとブキミな(本人はキュートだと思っている)笑みを浮かべた G 。懐かしさのあまりボーっとなっている私の手を無断で握り、ずかずかと店に入って行く。ちょっとアンタ、誰が手を握っていいって言ったか?やめるあるよ!なぜか内心中国人になって叫ぶリンコ。でも言葉にする前ににこやかなメートルディーに出迎えられてしまった。
「まあ。スイートなカップルね。ご予約は?」
やめてーやめてよー。こんなヤツとカップルとか思われたくないよー。
「 9 時半に予約した G だけど」
予約してあるのはいいけど、なんでそんな遅い時間に予約するんだ。
当時あまりアメリカ人とデート経験がなかったリンコ(今はまるであるかのようだな)。連中の大半が、特にデートディナーは 9 時以降という習慣を持っていることを知らなかった(ていうか、リンコがデートした大半のアメリカ人がそういうヤツだった)ため、 9 時半というディナータイムにもなんだか大人の汚い下心を見たような気分だった(純情ぶっているわけではない)。
「テーブルの用意ができたらすぐにお呼びしますので、それまでこちらでお待ちください」彼女が指差す先は、クッションだらけのソファ。そこには二組ほどのカップルがすでに無意味にいちゃいちゃしながら順番を待っている。あーいやだ。あーあんなとこにコイツと一緒に座ったら何されるかわかったもんじゃないよー。あーいやーたすけてーなんとかしてー。
〈ちょっとキレはじめたはずだったのに、また他力本願になるリンコ。どうするんだよ 一体、待て、次号! 〉
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