リンコの手をグッと握りしめたまま、クッションだらけのソファにずかずかと歩み寄る G 。その後ろ姿は、まるで道玄坂のラブホに女を強引に連れ込もうとしている中途半端に年をとった中小企業の上司みたいである。ぐにゃぐにゃと柔らかい布のソファに腰掛けると、案の定肩に手を回そうとする G 。すばやく脇にあったクッションを2?3個手に取り、ささっと G との間に詰め込んで防御するリンコ。
「オー。ナイスクッション」とクッションに腰をすりつけてさらににじりよってくる G 。こいつの前には、あからさまな拒否の意思表示も全く無意味なようである。
ああ。早く席に案内してくれないかなあ。そうすればこいつの魔手から逃れられるのに。と、 G のタコの足のようにからみついてくる手から必死で逃れなが らメートルディーに視線を送っていると、ほどなく「お席にご案内します」と彼女がにこやかに歩み寄って来た。
うわー助かった。さ。早く席に連れて行ってくれ。そうすればコイツから離れられるよ。
と思ったリンコ。世間知らず(?)とはこのことである。薄暗く細長いうなぎの寝床状の店内には、左側に大きなキッチンカウンターが長くのび、内側には5人ほどのコックさんたちがずらーっと並んで鉄板料理を披露している。右側には鉄板付きのテーブルがずらりと一列に並び、カウチ型の席が片方にだけずらっと並んでいるではないか。
じゃあなに。ここに座るということは、この G と並んで座って食事しろってこと?食事の間中、こいつと肩を並べろと? しかもテーブルとテーブルの間はウエイターが体を横にしてやっと入れるほどの狭いスペースしかなく、 G から逃れようとすると隣のスイートなカップルのボーイフレンドにすり寄ってしまうという事故が発生しかねない状況である。
〈ああ。思い出しただけでうげえっとなる事態がもうそこまで迫っている!がんばれリンコ、負けるなリンコ!待て、次号!〉
|